急激に発病し、流行は爆発的、かつ短期間内に広がる感染症です。規模は年によっていろいろですが、必ず毎年流行します。しばしば変異(型変わり)を繰り返してきた歴史があり、今後とも「新型インフルエンザ」発生への注意が必要です。合併症として、肺炎、脳症、中耳炎、心筋炎、筋炎などがあり、特に乳幼児、高齢者が重症になりやすいです。
病原体: インフルエンザウイルス A ソ連型、A 香港型、B 型、C 型(流行することは少ない)のほか、2009 年にはA(H1N1)pdm09 による世界的流行(パンデミック)が生じました。今のAソ連型は完全にこのpdm09に置き換わっています。A 型は地域をまたいで大流行しやすいが、B 型は局地的流行にとどまることが多い、というウイルスの性質があります。
潜伏期間: 1-4日(平均2 日)
感染経路(発生時期):患者の咳、鼻汁からの飛沫感染が主ですが、接触感染もあります。例年、12 月頃から翌年3 月頃にかけて流行します。流行の期間は比較的短く、一つの地域内では発生から3 週間以内にピークに達し、3-4 週間で終わることが殆どです。
感染(他者にうつし得る)期間:発熱 1 日前から3 日目をピークとし、7 日目頃まで。しかし低年齢児や免疫力に問題がある患者さんでは更に長引くことがあります。
症状: 典型的には悪寒、頭痛、高熱(39-40℃)で発病。頭痛とともに咳、鼻汁で始まる場合もあります。経過中高熱を伴わない場合もありますが、この時も感染力はあります。
全身症状は、倦怠感、頭痛、腰痛、筋肉痛など。呼吸器症状として、咽頭痛・鼻汁・鼻づまり、消化器症状として、嘔吐・下痢・腹痛、がみられます。脳症を併発した場合は、けいれんや意識障害を来し、重篤な場合は集中治療を行っても、死に至る場合や救命できても精神運動遅滞の後遺症を残すことがあります。
診断法: 鼻咽頭ぬぐい液を用いた抗原の迅速診断キットがあり、発症翌日が最も検出率に優れていますが、それでも偽陰性(本当は陽性なのに陰性の結果が出てしまうこと)を示すことは少なくないため、臨床診断(診察結果や周囲の流行状況などによる診断)を優先する場合があります。
治療法: 抗インフルエンザ薬を発症 48 時間以内に投与すると解熱までの期間短縮が期待できます。一般的には子ども(や持病がある人)には積極的に抗インフルエンザ薬を処方することを勧める専門家が多いのですが、どのような人に処方すべきか、意見が分かれるところです。
また、アスピリンをはじめとする解熱剤の多くは、脳症への進展を促進したり、その重症化に関連したりする可能性が示唆されているため、投与するのであればアセトアミノフェン(カロナール®、コカール®など)を選択します。インフルエンザの流行期には総合感冒薬の使用には十分注意を払いましょう。アセトアミノフェン以外の解熱剤成分が入っていることが多いからです。
予防法: 飛沫感染として、手洗いなどの一般的な予防法の励行のほか、インフルエンザワクチンの接種が有効です。任意接種ですが、生後6 か月から接種可能です。残念ながら、感染そのものの予防効果は高くありませんが、重症化の予防効果があります。特に持病を持つ人への接種が勧められています。
感染拡大予防法:インフルエンザの流行期に発熱と咳が生じた場合は園や学校は欠席し、安静と栄養をとるとともに、ぐったりとしている時には遠慮をせずに医療機関を早めに受診しましょう。罹患者は自ら感染を拡大しないように、外出を控え、必要に応じてマスクをしましょう。
登校(園)基準:学校保健安全法での出席停止の目安は「発熱した後5 日、かつ解熱した後2 日を経過するまで。ただし幼児(幼稚園・保育所児)においては、発症した後5 日、かつ解熱した後3 日を経過するまで」とされています。抗インフルエンザ薬によって早期に解熱した場合も感染力は残るため、発症5 日を経過するまでは欠席します。咳嗽や鼻汁が続き感染力が強いと主治医から判断されれば、出席停止期間はさらに長期に及ぶ場合もあります。ただし、“病状により学校医その他の医師において感染の恐れがないと認められた場合は、その限りではない”、ともされています。診察を受ける医師とよく相談しましょう。
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