どちらも流行性嘔吐下痢症の症状を呈するウイルスによる腸管感染症です｡

病原体：ロタウイルス・ノロウイルス

潜伏期間：ロタは1-3日、ノロは12-48時間。

感染経路：どちらも糞口（経口）感染、接触感染、飛沫感染します。ノロウイルスでは氷、二枚貝（カキが有名）、サラダ、パンなどの食品を介しての感染、集団食中毒例も頻発します。ノロウイルスは、便だけでなく吐物中にもたくさん含まれます。乾燥してエアロゾル（空気中にふわふわと漂う形態）化した吐物から空気感染も発生してしまうところが厄介です。

流行時期：ノロは秋季から春季にかけて、ロタは冬季から春先に多く発生します。保育園などの閉鎖空間でよく流行します。

感染期間：どちらのウイルスも、嘔吐や下痢が見られる時期の感染力が最も強力ですが、症状が治まった後でも便中に3 週間以上排泄されることがあります。

症状：どちらも嘔吐と下痢が主な症状です。発熱を伴うことも珍しくありません。特に赤ちゃんのロタウイルス感染症ではしばしば高熱が持続します。白っぽくて酸臭を伴う下痢はロタウイルスだけではなく、ノロウイルスでも出ることがあります｡殆どの場合、ノロウイルスは1～3日、ロタウイルスは2～7 日で治りますが、激しい嘔吐・下痢のために、特に低年齢の子どもでは容易に脱水になってしまうことがあります。今も発展途上国を中心に、ロタウイルス胃腸炎による脱水で約50万人程度の子どもたちが亡くなっていると推計されています（世界的なロタウイルスワクチンの普及でこの数は今後減少していくはずです）。また、ロタウイルス感染症では脳症を合併することがあり、生死に関わる可能性があります。

ノロウイルスでは子どもだけでなく、高齢者の方での脱水や嘔吐に伴う誤嚥にも注意が必要です。

好発年齢：

ロタウイルス；乳幼児が殆どです。世界中の子どもが5歳になるまでには1回は感染する、と言われています。毎年の流行時期に繰り返して感染するうちに免疫がついて、年齢が大きくなるに従って軽く済んだり、症状が出なかったりするようになると言われています。

ノロウイルス；ロタウイルスと違い、子どもから大人まであらゆる年齢層の人がかかり、繰り返しかかってもしっかり症状を示す場合が多いのが特徴です。医学的にユニークな点として、血液型に関した特定の遺伝子の状況によって、ノロウイルスにかかる人とかからない人がいることが分かっています。

診断法：どちらのウイルスも便を材料として、抗原迅速診断キットでの診断が可能ですが、ノロウイルスの場合、保険診療の適応が「3歳未満の小児と65歳以上の高齢者、がんなど特定の持病がある人のみ」に限られています。迅速検査ではウイルスの型や量によっては偽陰性となることもあるので「陰性だから絶対ロタ（もしくはノロ）ウイルスではない」、とは言えません。周辺での流行状況や家族の症状などから臨床診断する場合も多いです。

治療法：有効な治療薬はなく、点滴や制吐剤、整腸剤の内服など対症療法が行われます。ロタウイルスの脳症合併例では集中治療が必要です。

予防法：糞口（経口）感染、接触感染、飛沫感染として、一般的な予防法の励行、とりわけ手洗いをしっかりすることが大切です。また、ロタウイルスにはワクチンがあります。2011 年から日本でも経口生ワクチンが任意予防接種として開始されました。ワクチンの普及につれて各地からロタウイルスの流行規模が小さくなっているとの報告が挙がっています。

ノロウイルスのワクチンはありません。

感染拡大防止法：ウイルスを含んだ（付着した）水や食物、手を介して、または排泄物から飛び散って感染するので、患者と接触した場合は、手洗いを励行します。ノロウイルスは速乾性すり込み式手指消毒剤やアルコール消毒は無効なため、流水下で石鹸で手洗いをし、食器などは熱湯（1 分以上）や0.05-0.1%次亜塩素酸ナトリウムを用いて洗浄します。食品中のノロウイルスを無害化するには85℃、1 分以上の加熱が有効です。ロタウイルスも基本的には塩素系消毒剤の使用が望ましいのですが、アルコール消毒にも一定の効果が期待できます。

登校（園）基準：下痢や嘔吐症状のある間が主なウイルスの排泄期間なので、症状が消失した後、元気になって食事も普段通り食べられるようになれば登校（園）可能です。但し最初に書いたように、特に小さなお子さんだと長く便の中に排泄が続くことがありますから、便の始末後の手洗いを励行しましょう｡