RSウイルスは秋から冬、ヒトメタニューモ(hMP)ウイルスは冬から春にかけて主に流行します。規模は年によって異なりますが、インフルエンザと同様、必ず毎年流行します。数は少ないものの、真夏にも検出されることもあり、通年性に感染は起こり得ます。主に乳幼児が感染し、重症化すると呼吸困難に陥ることもある「急性細気管支炎」の原因として代表格です。
このうち、hMPウイルスはRSウイルスに比べるとあまり聞き馴染みのないウイルス名かもしれません。200年くらい前から世界中にいたことが分かっていますが、発見されたのは2001年と比較的最近です。RSウイルスにかかったのとそっくりの症状を起こすのに、原因がRSウイルスではない、という子どもたちの鼻や喉から発見されました。
ちなみに、RSとhMP以外のウイルスでも「急性細気管支炎」は引き起こされますが、ここでは代表格のこの2種について述べます。
病原体:RSウイルス・hMPウイルス
潜伏期間:いずれのウイルスも平均的には4-6 日程度(2-8 日)。
感染経路:飛沫感染が主ですが、接触感染もします。
感染期間:症状のある間は感染力があります。他の人に最もうつしやすいのは症状の激しい発症3-8日目ですが、乳幼児や免疫に問題のある症例ではウイルスの排泄が3-4 週間、あるいはもっと長期間持続することが報告されています。
症状:発熱、鼻汁、咳嗽、喘鳴(呼吸に伴ってゼーゼー、ヒューヒューすること)。年長児や成人では、軽いかぜ症状ですむ場合も多いのですが、乳児早期に感染した場合は急性細気管支炎という病気になりやすいとされています。この場合、喘鳴がひどく、呼吸困難も悪化し、最悪の場合、人工呼吸管理を要することもあります。そこまで悪化しなくとも、哺乳が不十分になったり、あるいは、飲ませてもむせてしまい誤嚥の危険性が高まるため、入院での観察、治療が必要になることが殆どです。また、細気管支炎とはならず、気管支炎や肺炎になったり、あるいは合併したりすることもあります。細菌性の肺炎や中耳炎もしばしば合併します。もともと喘息のある子どもが罹患すると、発作を併発することも珍しくありません。また、低年齢のうちにこれらのウイルスにかかると、気管支粘膜の敏感さが亢進し、後々カゼにかかった時に喘鳴を繰り返す、あるいは喘息を発症するリスクが高まる可能性が指摘されています。
発熱はいずれのウイルスでもよく認めますが、月齢の小さな赤ちゃんがRSウイルスにかかった場合、発熱はほとんどないまま、あるいは解熱した後から呼吸状態が悪くなることがしばしば経験されます。また、RSに比べると、hMPにかかった時の方が発熱の程度が高く、期間も長めなことが報告されています。
好発年齢:RSウイルスは1歳以下、hMPウイルスは1~2歳の小さな子たちに特に多く報告されます。但し、実際には3歳以上の子どもたちも多数かかっているものの、軽症で済んでいるため検査を行っていない(保険適応がない)のが実情と思われます。
いずれのウイルスでも低年齢・初感染ほど重症化しやすく、毎年の流行時に繰り返しかかることで、次第に免疫もついて軽くなっていくと言われています。但し、成人でも症状が出ることはありますし、特に高齢者ではしばしば重症化します。
診断法:RSウイルスの場合、乳児や入院の必要な症例には抗原迅速診断キットを用いた検査が保険適応になっています。hMPウイルスの場合も、2014年1月から「画像診断(主に胸部のレントゲン検査)により肺炎が強く疑われる6歳未満の患者」に対して迅速診断キットが保険適応になりました。いずれのキットもインフルエンザの時と同様、鼻から検体を取って検査します。
治療法:どちらのウイルスにも有効な治療薬はなく、対症療法が行われます。すなわち、安静、適切な栄養・水分摂取、症状を和らげる種々の薬の使用が主体です。細菌感染症を合併した時は抗菌薬も使用します。喘息発作を合併した時などはステロイド剤が併用されることがあります。呼吸状態によっては入院の上で酸素投与が行われ、それでも間に合わない程に悪化すれば人工呼吸器の装着が考慮されます。
予防法:飛沫及び接触感染予防を行います。これらのウイルスの流行期には、特に0-1歳代の子どもたちを人ごみに出さない、カゼ症状のある年長の子や成人との密な接触を避ける、小さな赤ちゃんが身近にいる人はカゼ症状のある間はマスクをする、などの配慮をしましょう。手洗いをしっかりすることも重要です。特に6か月未満の赤ちゃんや、心臓や肺に持病がある、あるいは先天性の病気があるような子どもたちは、罹らないように十分注意をしてあげて下さい。
RSウイルス感染の予防に関しては、特別な薬があります。早産児、先天性心疾患、慢性肺疾患、ダウン症を持つ乳児では、モノクロナール抗体(パリビズマブ(商品名シナジス))を流行期に月1 回筋肉注射することによって発症予防ないしは軽症化を図ることが可能です(保険適応)。この予防法が開発・適応されるまでは、RSウイルスにかかった時は生命に関わるほどの重症化を覚悟しなくてはならなかった子どもたちに、大きな福音がもたらされています。
残念ながらhMPウイルスではこのような薬剤は開発されていません。
登校(園)基準:咳などの症状が安定した後、全身状態がよくなればは登校(園)可能ですが、手洗いを励行しま
しょう。
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おおてまちキッズクリニック内 担当:佐藤東