紅斑(虫刺されのような小さな赤い発疹)、丘疹、水疱~膿疱、かさぶた、の順番で進行する発疹が出現し、同時に色々な時期の発疹が混在するのが特徴の病気です。麻しんと同様、空気感染し感染力は非常に強く、時に肺炎、脳炎、肝炎、ライ症候群(急性脳症)などの重い合併症を併発することもあります。子どもがみな罹る病気だと軽く見てはいけません。
病原体:水痘・帯状疱疹ウイルス。初感染では「水痘」の症状を起こしますが、水痘が治ったあと、ウイルスは知覚神経節に潜伏(症状を出さずに潜むこと)し、宿主の免疫状態が低下した時に、神経の走行に沿って小水疱が生じる「帯状疱疹」として再発症することがあります。
潜伏期間:通常 14-16 日。10 日未満や21 日程度になる場合もあります。
感染経路:空気感染、飛沫感染。発疹内の膿や水疱中には大量のウイルスがいるので、病変部位に触れば接触感染もします。帯状疱疹からは(原則)飛沫感染しませんが、接触感染はあり得ます。かさぶたにまでなればその中にはウイルスはいないため、感染源とはならないとされています。
感染期間:発疹出現 1-2 日前から全ての発疹がかさぶた(痂皮)となるまで。
症状:発疹はからだと首のあたりから顔面に生じやすく、発熱しない例もありますが、39℃を超えるような高熱を伴う場合もしばしばあります。発疹は紅斑、水疱、膿疱、かさぶたの順に変化し、かゆみや疼痛を訴えることもあります。掻き壊すと「とびひ」を合併することもあります。特にアトピー性皮膚炎など、皮膚が弱かったり敏感だったりする人では起こりやすいです。水痘に溶連菌によるとびひを合併すると非常に重症化しやすいので注意が必要です。四肢の壊死につながってしまった例も報告されています。また、まれに脳炎や、アスピリンとの併用によってライ症候群という重い合併症を併発する場合や、白血病や免疫抑制治療を受けている児では、水痘そのものが重症化して死に至ることもあります。また妊婦の感染によって、時期によっては児に「先天性水痘症候群」といって、低出生体重、四肢低形成、皮膚瘢痕などを伴う先天異常が生じたり、あるいは出産時期に近い感染だと新生児に致死的な重症水痘が生じることもあります。日本では年間約100 万人が水痘にかかり、約4,000 人が重症化のため入院し、約20 人が死亡しているとの統計結果があります。
診断法:通常、臨床症状より診断されることが殆どですが、軽症の場合など、確定のためには血液での抗体検査が必要になることがあります。
好発年齢:幼児
治療法:抗ウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビル)
予防法:多くの先進国で 2 回の予防接種が行われています。日本では長らく任意接種であり、接種率が低く、流行が蔓延していましたが、2014年10月からやっと定期接種化されました。今後、日本での水痘罹患者が激減する可能性があります。定期接種には年齢制限がありますが、法定年齢外でも1歳以上なら成人も含めて任意接種が可能です。海外では、高齢者の帯状疱疹発症予防のため、成人に対するワクチン接種が行われている国もあります。
感染拡大防止法:空気感染のため、学校などの集団の場では1 名の発症があった場合、他の全員の予防接種歴の聴取が望ましいです(実際にはなかなか行われていませんが)。患者との接触後、72 時間以内であればワクチンにて発症の阻止、あるいは症状の軽減が期待できます(いわゆる「追っかけワクチン」)。
登校(園)基準:すべての発疹が痂皮化するまで出席停止とします(米国小児科学会では水疱出現6 日後までを隔離の目安としており、免疫が低下している人との接触はさらに長期間避けることが推奨されています)。
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おおてまちキッズクリニック内 担当:佐藤東