全身の感染症ですが、特に肺に病変をおこすことが多い病気です。子ども、特に乳幼児では家族から感染することが多く、また大部分が「初期感染結核」と言われる病型をとります。ご存じない方も多いと思いますが、予防接種の効果や治療法の発展で致死率は低くなったものの、実は、日本は先進国のなかでも依然として結核の「中蔓延国」と国際的に認定されているのです。
病原体: 結核菌
潜伏期間:2年以内、特に6 か月以内に多いが、初期結核後、数十年経ってから症状が出現することもあります。
感染経路:主として空気感染、飛沫感染ですが、経口、接触、経胎盤感染もあります。
感染期間:喀痰の塗抹検査(痰をスライドグラスに塗布して顕微鏡で調べる検査)で菌が陽性の間。
症状:
初期結核= 結核菌が気道に入って、肺に原発巣を作ると初感染が成立し「初期肺結核症」といわれます。最初は無症状であるか、症状があっても軽く、風邪と思われて結核とで気付かれないことが多いのが特徴で、困った点です。一般的な症状は発熱、咳、疲れやすい、食欲不振、顔色が悪い、などです。
粟粒結核= リンパ節などの結核病変が進行して菌が血液の中に入り、体中にばらまかれると全身に感染が及びます。肺では粟粒大の多数の小病変が生じ、発熱、咳、呼吸困難、チアノーゼなどが認められます。この病型は乳幼児(特にBCG未接種者)に多くみられる重症型です。
二次性肺結核= 初感染病巣から他の肺の部分に広がり、病巣を形成した病型です。思春期以降や成人に多くみられます。倦怠感、微熱、寝汗、咳などの症状が出ます。
結核性髄膜炎= 結核菌が血液の流れを介して脳・脊髄を覆う髄膜に到達して発病します。高熱、頭痛、嘔吐、意識障害、けいれんなどがみられる最重症型で、粟粒結核にしばしば合併します。一命をとりとめても後遺症を残す恐れがあります。
他にも、腸や骨など、全身のあらゆる臓器に感染し病気を起こす可能性があります。
診断法:病型にもよりますが、胸部レントゲン写真やCT検査、ツベルクリン反応、「γインターフェロン産生試験」という血液検査、痰などの中に結核菌がいるかどうかの検査(塗沫検査や培養検査、遺伝子検査)を組み合わせて診断します。「γインターフェロン産生試験」は非常に有用な検査なのですが、12 歳未満、特に5 歳以下では感染しても陽性になりにくい特徴があります。結核、特に小児の結核は確定がなかなか難しいことも多いのです。
治療法:抗結核薬を使用して治療しますが、近年、薬剤耐性菌(従来の抗結核薬が効きづらい菌)が増加していて、世界的に問題となっています。
予防法:BCG ワクチンは、乳児の結核の発症予防、重症化予防になるため、生後12 か月までの赤ちゃん対象の定期接種となっています。しかし、BCGは生ワクチンのため、生まれつき免疫の弱い病気がある赤ちゃんへの接種を避けなければなりません。ワクチン中の菌によって病気になる可能性があるからです。BCGを接種してはいけないような重症の免疫疾患を持つ赤ちゃんは通常生後3か月までに発症することがほとんどである、というこれまでの報告に基づいて、BCGワクチンは生後3 か月以降に接種することになっています。一方で、粟粒結核を含めた重症の初期結核は小さな月齢の赤ちゃんに起こりやすいので、生後6 か月までの接種が望ましい、とされています。
登校(園)基準:病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認められるまで(目安として3 日連続で喀痰の塗抹検査が陰性となるまで)出席停止とします。それ以降は、抗結核薬による治療中であっても登校(園)は可能です。
北九州地区小児科医会の連絡先
事務局 📮803-0814
福岡県北九州市小倉北区大手町12−4
おおてまちキッズクリニック内 担当:佐藤東