学校において予防すべき感染症

-学校保健安全法-

 

はじめに

 

 学校や保育所、幼稚園は、子どもたちが集団生活を営む場であり、感染症が流行しやすく、子どもたちの日常生活や教育活動、ひいては社会全体にも大きな影響を及ぼすことになります。そこで、旧・伝染病予防法のもと、学校での健康管理について昭和33年に「学校保健法」という法律が制定され、「学校伝染病」がこの法律内で定義されました。同時に、感染症(旧伝染病)予防・拡大防止のため、必要時に学校長は児童生徒に「出席停止」を指示するよう規定されるようになりました。

 

 以後、感染症に関する新たな知見が増え、また社会情勢の変化に伴い幾度かの改正を経て、平成21年に「学校保健法」は「学校保健安全法」に改称・改正され、また、平成24年には「学校保健安全法施行規則」が改正されました。インフルエンザに罹った時の出席停止日数が以前より延長したことは、皆さんの記憶にも新しいことでしょう。同時に百日咳と流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)の出席停止期間も見直され、新たに「髄膜炎菌性髄膜炎」が予防すべき感染症に追加されました。

 

 

出席停止および臨時休業(休校や学級閉鎖)について

 

 学校での感染症の拡大を防ぐために、患者となった生徒の出席を停止させたり、学級・学校を臨時休業としたりすることがあります。これらの出席停止や臨時休業は上記の「学校保健安全法」に基づいて行われるものです。


出席停止:学校保健安全法第十九条  校長は、感染症にかかつており、かかつている疑いがあり、又はかかるおそれのある児童生徒等があるときは、政令で定めるところにより、出席を停止させることができる。 


臨時休業(休校や学級閉鎖):学校保健安全法第二十条  学校の設置者は、感染症の予防上必要があるときは、臨時に、学校の全部又は一部の休業を行うことができる。

 

「学校において予防すべき感染症」の分類

 

今般の法改正時から「学校伝染病」ではなく「学校において予防すべき感染症」という言葉が使われるようになりました。

これらは第一種、第二種、第三種の三つに分類されています。

 

 

第一種(=まれだが、生死に関わる可能性の大きな感染症)

 

 「感染症法」という法律内で「一類感染症」と結核を除く「二類感染症」に規定されているものです。すなわち、エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱、急性灰白髄炎(ポリオ)、ジフテリア、重症急性呼吸器感染症候群(SARS)、鳥インフルエンザ(A型インフルエンザで血清亜型がH5N1であるものに限る)です。出席停止の期間の基準は、いずれも(もちろん)「完全に治癒するまで」です。

 

 

第二種(=よく流行する感染症)

 

 放置すれば学校、幼稚園や保育園で流行が広がってしまう可能性が高い、空気感染や飛沫感染する感染症です。

インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H5N1)を除く)、百日咳、麻しん、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)、風しん、水痘(みずぼうそう)、咽頭結膜熱、結核、髄膜炎菌性髄膜炎です。

出席停止期間の基準は、「学校保健安全法施行規則」により感染症ごとに以下のように定められています。 ただし、「病状により学校医その他の医師において感染のおそれがない」と認められたときはこの限りではないと規定されています。

 

各感染症について、出席停止期間も含めた詳細を 4. 代表的な感染症一覧 で解説していますのでそちらを参照して下さい。

 

 

 

第三種(=主に経口/糞口感染と接触感染)

 

 学校生活を通じ、流行が広がる可能性がある感染症で、腸管感染症と眼感染症である以下の感染症です:コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス・パラチフス、流行性角結膜炎、急性出血性結膜炎。以下、出席停止期間について簡単に説明します。

 

(1)コレラ

 治癒するまで出席停止が望ましい。なお、水質管理や手洗いの励行など日頃の指導が重要です。

 

(2)細菌性赤痢

 治癒するまで出席停止が望ましい。

 

(3)腸管出血性大腸菌感染症
  有症状者の場合には、医師によって感染のおそれがないと認められるまで出席停止。無症状病原体保有者の場合には、トイレでの排泄習慣が確立している5歳以上の小児は出席停止の必要はない。5歳未満の小児では、2回連続して便培養が陰性になれば登校(園)してよい。手洗いの励行等の一般的な予防方法の励行で二次感染は防止できる。

 4.代表的な感染症一覧 も参照してください。

 

(4)腸チフス、パラチフス

 治癒するまで出席停止が望ましい。トイレでの排泄習慣が確立している5歳以上の小児は出席停止の必要はない。5歳未満の小児では、3回以上連続して便培養が陰性になれば登校(園)してよい。

 

(5)流行性角結膜炎
  眼症状が軽減してからも感染力の残る場合があるので、医師において感染のおそれがないと認められるまで出席停止。なお、原因のアデノウイルスは便中に1ヶ月程度排出されることもまれではないので、登校(園)再開後も手洗いを励行する。

 4.代表的な感染症一覧 も参照してください。

 

(6)急性出血性結膜炎
  眼症状が軽減してからも感染力の残る場合があるので、医師において感染のおそれがないと認められるまで出席停止。なお、主な原因となるエンテロウイルスは便中に1ヶ月程度排出されることもまれではないので、登校(園)再開後も手洗いを励行する。

  4.代表的な感染症一覧 も参照してください。